
5. まとめ
以上、都道府県・指定都市の地域福祉基金の現状分析を踏まえて、東京都における振興基金の事例を中心に、交流基金の改善事例もまじえながら詳細に検討してきたわけである。その結果から得られた結論は、次のとおりである。すなわち、市民セクターの基本的な要望にも十分に応えられるとともに、間近に追った公的介護保険制度の導入による社会環境の激変にも安定的な事業が確保されるためには、助成事業のコンセプトが「補完的特定事業助成」から「独自的団体育成助成」ヘシフトされなければならないし、すでに実際の改善例等でもその方向で行われているということが確認できるのである。 そうしたことは、何も東京都の場合に限らず、通知と交付税措置の下にある全国の地域福祉基金の場合にはなおのこと、そのようにもいえるのではないか。紙幅の関係からこれ以上言及できないが、少なくともこの間に調査した府県や指定都市に限っていうならば、そうしたことは妥当するように思われる26)。 最後に、一般的に市民セクターへの財政支援について考える場合、重要な論点である日本の市民セクターの行政との連携における対等な関係の樹立問題に関して私見を述べておきたい。すでに指摘してある「独自的団体育成助成」へのシフトは、さしあたりそのための重要な条件確保のひとつとしては成り立ちうるわけであるが、それだけでは決して「補完的特定事業助成」への不可逆条件が確保されているわけではない。やはり、ここでみたような行政分野別の助成基金とは別個に、市民セクター一般に対する専門的な助成基金類(複数)が行政(や民間)によって新設される用意がなくてはならないと考える。今や、市民セクターへの財政支援のあり方を論じる際には、その点を視野に入れておかなければならないだろう。 注 1)1996年中に出された主な提言等は、次のとおりである。『市民公益活動の促進に関する法と制度のあり方』(総合研究開発機構、1月)、『ボランティア活動に対する支援方策について』(大阪市ボランティア活動懇談会、1月)、『社会参加活動推進システム調査(経済企画庁委託調査〕』(社会開発研究所、3月)、『地域づくりのための民
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